拳ほどの頭が、穂の出ていないススキの原に見える。毛に覆われたあれが、ひょこっと飛びだす。すっと隠れた。少し離れた。ゆっくりとぷわぷわに近づく。やや離れた所に出た。目が合ったらしい。動きが止まる。動けない。唐突に引っ込む。もう少し追う。隠れる。ひょこっと出てみる。 #twnovel posted at 23:57:43
軽い刺激が手首から伝わる。痛みよりも、周りの人に気付かれて無いかと様子を窺う。もちろん自然な様子は崩さない。どうやら大丈夫だ。普通バンド。突飛な行動を知らせてくれる。社会生活の標準指針機。自分の判断は世間の常識と同じじゃない。でも、これがあれば安心して暮らせる。 #twnovel posted at 22:38:57
「この鉄球さえ転がせば、樋を伝って腕木を叩き、バネが外れてボールが飛び、籠に入って天秤が傾き、バケツの水が溝を流れ、水車を回して紐を引き、つっかい棒を外してレンガが落ち、シーソーの反対がタイヤを押し、坂を転がり落ちた先で奴を奈落へ落とす。恐ろしくて出来ない。あ」 #twnovel posted at 23:52:56 情けない姿につい目頭が熱くなる。離れたくないからと冷たくなっても晒していた。エゴだ。罰が当たるとはこの事だ。いつも側に居て、暖めてくれたのに。数ヵ月後にまた会える筈だったのに、本当にお別れだとは。箱に納める前に少しだけと電源を繋ぐと、点かない。炬燵よ、さよなら。 #twnovel posted at 22:05:37
「まぁ、理容と美容も男女の違いだったんでしょうね」等と話しながら機具を揃えている。「あおむけは腹切りの印象があるから、男は嫌ったとか」シャンプーが江戸時代からあったのだろうか。「じゃあ、口を開けて下さい」と潜り込む。結局理由は不明か。うつ伏せの歯医者は初めてだ。 #twnovel posted at 23:58:32 両手で箱を持ちガラガラと鳴らして振り出す。おみくじ。みくじ棒の先に暗号化されたコードが書かれている。レーザーで明示された読み取りエリアに翳すと、圧縮されたみくじ箋の番号が解凍される。二の十三乗枚。一般的な神社だ。八千百九十二枚の運勢を集計し結果を受け取る。大吉。 #twnovel posted at 21:36:16 知らない奴に袖を引かれた。「我々は月曜人だ」路地で耳打ちされる。侵略者だろと問えば「今日はこれぐらいにしておく」と言い、闇に消えた。「来週も仲間が見張っている」姿の無い声が響く。「どうせ年で五十二人なんだろ」大声で問うが答えは無い。休み後の侵略者は怠惰で素早い。 #twnovel posted at 21:22:27
「最善を望んで、最悪に備えよ」繰り返し唱える。困難な任務。自ら望んだことから逃げられない。何度も練り直し、徹夜で体力も落ちてきた。これでは駄目だ。無理矢理に寝る。追い込まれては駄目だ。無理矢理に笑って余裕を作る。当日。望みは砕け、備えは役にたった。彼女に幸あれ。 #twnovel posted at 22:25:09 大きく柔らかい物は暖かい。物足りない気もするけど、多くの人が共感する。押せば手応えが無いほど。どこまでも入り込める。小さく凝り固まった物は容易に触ると怪我をする。熱く尖り、突き刺さる程激しい。他を拒絶する振る舞いは、一人のために存在する。どちらも良心と呼ばれる。 #twnovel posted at 21:06:43 送迎のバスがリアタイヤを数回跳ねながら止まると、エンジンが黒煙を吐き止まった。爆音で歓迎の大声。数枚のガラスが吹き飛ぶ。宿の番頭が客全部の荷物を担ぎ、全速力で駆けて行く。玄関で泡を吹いて倒れていた。女将が上がり框に頭突きしながら挨拶をする。「ここが、限界集落か」 #twnovel posted at 20:09:19
窓は密閉され、鍵穴さえ塞がれていた。完全な密室。錠前を破壊すると、風が室内に流れ込む。数人でドアを引き開けると、ポンと音がした。部屋の中央に死体。外傷は無く、所見では窒息死だ。「自殺、でしょうか」「まぁ、殺人ではないかも」換気扇がもくもくと空気を吸い出していた。 #twnovel posted at 20:18:14
結局言い当てられたサプライズを実行した。指輪を渡そうとしたら、抑揚なく「わあ、眩しくて見えないー」と言う。「あ、これがあった」と、日食観測グラスを掛ける。「あれぇ見えない。どこー」と、手に取らない。なんでこんな娘を好きになったのか。日食が毎年じゃ無くて良かった。 #twnovel posted at 20:19:14
「水に晒すなんて」また、ほぐれない言い合いが始まりそうで逃げ出した。パスタでもない。太麺じゃねぇか。うどんが食べたいんだ。ラーメンばかり喰わせやがってと、相手が居ない所でも同じ言葉を吐いてるのに気付いて止めた。そうめんの季節でもない。麺喰い同士の意地の張り合い。 #twnovel posted at 23:13:24 灯りの点いた部屋。白く光る窓。空の半分だけが夜の時間。住宅地の辺り。東の明るさが増すにつれて、いくつかの窓が同じように点った。目覚まし時計の見る夢。夜に向いた窓に映す願い。朝を知らせるブザー。歯車を失ったチクタク。金属のベルの音が鳴った気配。灯りは何処にも無い。 #twnovel posted at 21:34:40
しょうが焼きである。肉を焼くのだから、本来はしょうが風味醤油味焼肉などと表現するか、鉄板焼きしょうがタレ付けと、手段に申し訳なさそうにへつらうべきであろう。しかし、なぜか主役を張って堂々としている。茄子には下手に出てるのだが、肉に強気なのは当事者の事情だろうか。 #twnovel posted at 21:28:59 「宇宙風呂です」無表情に語る自称科学者。背後には、ありふれた家庭用の風呂があるだけだった。ため息の代わりの質問に答え。「ハイパーリンクしたメタ環境とでも言いましょうか」割り込もうとすると。「一人で消えるのはどうもね」ポンと、栓を抜く音。空と地がごぼこぼと振動し。 #twnovel posted at 18:48:16 橙色に染まり切った荒涼の大地に、黒い俄雨が広大な模様を描いていく。青く澄んだ海洋は干上がり、白い雲は千切れ飛んだ。紫の植物が山を覆い、大輪の花が藍色で斑に群生地を主張する。赤の肌に黄色の模様。背景に溶け込まない獣たち。緑の太陽が沈む。くっきりとした虹色の景色に。 #twnovel posted at 13:41:47 一人じゃ生きられない。また、愚痴を言ってしまう。黙って聞いてくれるかい。いつものように。だけど、君だけじゃあ寂しかったんだ。でも、文句は言わないよね。静かなのが好きなんだ。今度の子は向い側の壁にするよ。見えないから平気だろ。許してくれるなら、新しい壁紙を貼ろう。 #twnovel posted at 02:25:03
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last update 06/05 14:38
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