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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer@NJSLYR

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5,006日(2010/07/15より)
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130,376(26.0件/日)

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2020年02月29日(土)6 tweetssource

2020年02月28日(金)76 tweetssource

2月28日

@gi_ongo

ファ流シ音/ギ音誤P@gi_ongo

gdtkcave.web.fc2.com/NSReplay/NSRep
『ニンジャスレイヤーTRPGリプレイ ソロアドベンチャー 飼い猫探し編』
222参加シナリオのリプレイを書いて222に参加だ!
飼いネコを探してイクサを繰り広げるソロ(2PC)アドベンチャー。
#ニンジャスレイヤー222 #njslyr #njrpg

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2月28日

@darewaruhigeki

誰も悪くないこれは悲劇や@darewaruhigeki

【忍殺】ヨロシサン・ミステリガイド|NNNNNNN #note note.com/5656jjhghu/n/n  深夜にひっそりと。「ヨロシサン・エクスプレス」が面白かったヘッズに薦める十二冊のヘンテコミステリ。あるいは、十二冊の類似作から帰納的に読み解くヨロエク。 #njslyr #dhtpost #ニンジャスレイヤー222

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2月28日

@koyazawa_ninja

古矢沢(コヤザワ)@koyazawa_ninja

ニンジャスレイヤーTRPG:PvPセッティング『エージェント・オブ・ブラッドカタナ』|koyazawa_ninja @koyazawa_ninja #note note.com/koyazawa_ninja 新たな記事を公開!記憶喪失のユカノを巡り、ソウカイヤ対ドラゴン・ドージョーのイクサが始まる!#njrpg #DHTPOST #njslyr #ニンジャスレイヤー222

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2月28日

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer@NJSLYR

このあと9PMから、ニンジャスレイヤーPLUS収録作の特別Twitter連載放送プログラムを行います。作品はドラゴン・ユカノが岡山県でドージョー立ち上げに頑張る人気エピソード「ドラゴン・ドージョー・リライズ」。"良い" とはなにか。リアルニンジャとは。貴方は今、少しわかる!

posted at 20:50:00

2月28日

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【前提知識】

・常人にニンジャソウルが突然入り、ニンジャになる。

・本来は、常人はセンセイのもとで教えを受けて鍛錬を重ね、ニンジャになるものである。これをリアルニンジャという。

・ドラゴン・ニンジャは強大なリアルニンジャであり、今はユカノという名で暮らす。ドージョーを復興したい。

posted at 20:55:00

2月28日

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標高2000メートル超、岡山県の峻厳な山脈の頂上付近。その日の空は青く澄み渡り、さながら、彼女の晴れやかな心を映しているかのようだった。風雨に晒されたドージョーをあらためて清め、ようやく彼女は再びドージョー正門に、「ドラゴン・ドージョー」の金文字看板を掲げるに至ったのである。 1

posted at 21:05:00

2月28日

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer@NJSLYR

「もう少し右だ! 右!」「そう、いいぞ……よし」「固定完了だ」「いやあ、完成だ」完全登山装備で招かれたキョートのミヤダイク達は一か月にわたる改修作業を終え、達成感に互いを讃え合った。ドラゴン・ユカノはやや離れた場所まで下がり、その力強い門構えを眺め、表情を輝かせた。 2

posted at 21:08:00

2月28日

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「ご苦労でした、皆さん。このような地にお越しいただき、これほどの仕事を」彼女はミヤダイク一人一人の手をしっかりと握って労い、砂金の詰まった袋を丁寧に手渡しした。不満を漏らす者が居よう筈もない。やや世間知らずなほどに金払いの良いクライアントであったからだ。 3

posted at 21:11:00

2月28日

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「帰り道にも、どうか気をつけてくださいね」「勿論です」「せっかく頂いた報酬も、命あっての物種ですから!」ミヤダイク達は笑った。ユカノはあらためて礼を言った。「本当に、素晴らしい仕事。感謝します。ここからが私の腕の見せ所ですね」高揚感と達成感が彼女の心を満たしていた。 4

posted at 21:14:00

2月28日

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彼女はトレーニング・グラウンドに列をなしてジュー・ジツの基本ムーヴを繰り返すニュービーニンジャ達の姿を幻視した。ドージョーの復興は決して容易い道ではあるまい。恐らく最初の一か月は、訪れる弟子志願者も少ない筈だ。過度の期待は持たず、粛々と頑張っていこう。ユカノは微笑んだ。 5

posted at 21:17:00

2月28日

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ユカノは庭の白砂に鋤で模様を描き終えると、井戸水を汲み、ドージョーの廊下に雑巾をかけた。質素なオキアミの粥を食し、食器を洗い、木人ワンインチ・カラテ訓練を60分繰り返した。ジュー・ジツのシークエンスを七種類こなし、冷水を浴び、それからドージョー・グラウンドの中央でザゼンをした。 7

posted at 21:23:00

2月28日

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer@NJSLYR

そうすると時刻は既に正午を過ぎる。そのあと朝に作っておいたオニギリを漬物と共に食し、山道を駆け上がり、ドラゴン・ダンジョン墳墓の封印を確かめ、再び木人トレーニングを行い、オンセンに浸かり、チャドーを行う。それから彼女は事務室に入り、UNIXデッキを前にした。 8

posted at 21:26:00

2月28日

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer@NJSLYR

確認するのはIRC-SNSだ。0と1のデジタルデータが滝めいて流れ落ち「ドラゴン・ドージョー」の電子看板が浮かび上がった。電子看板の周辺には「丁寧な訓練」「強いトレーニング」「力と責任」「厳しい修行」などの文言が力強く光っている。ユカノはキーボードをタイプした。 9

posted at 21:29:00

2月28日

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「本日も好日。美しい雪の峰が見えます。ひんやりとした空気の中でジュー・ジツの立ち回りを行うと、心身ともに氷水で清められるかのようです」ユカノは少し考え、文言をつけ足した。「ドラゴン・ドージョーに是非お越しください。懇切丁寧に指導いたします。カシコ」 10

posted at 21:32:00

2月28日

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彼女は過去のSNSログを辿った。ドージョーを開いて以来、彼女は修行の日記を毎日つけ、公開していた。IRC-SNSには、閲覧者が記事に「良い」をつける機能が備わっている。残念ながら、これまで書いて来た日記に「良い」がつけられたことはなかった。なかなか厳しいものだ。ユカノは目を伏せた。 11

posted at 21:35:00

2月28日

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer@NJSLYR

門弟の数はいまだゼロ。テクノロジーが発達した現代において、肉体をこつこつと鍛錬する事は時流に沿っていないのかもしれない。強靭な肉体はサイバネティクスやバイオテックで容易に手に入る。それ以上の高みを目指す者が初めてカラテを選択肢に入れる現状だ。 12

posted at 21:38:00

2月28日

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しかも、ニンジャソウル憑依者たちの存在がさらに事態を難しくしている。彼らは苦心してカラテを鍛錬した者たちを、ディセンションによって一足飛びに追い抜いてしまうのだ。本来、カラテ鍛錬は肉体と精神をともにバランスよく修養するものであり、決して一朝一夕のうちに強さを与えるものではない。13

posted at 21:41:00

2月28日

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だが、たとえニンジャソウル憑依者であろうと修行鍛錬の重要さは決して変わらない筈。己の強さに対して謙虚にならねば、いずれ己以上の使い手が現れた時……。「いけない」ユカノは我に返り、自嘲的に首を振った。こうした内容を日記記事に書いた事もあった。やはり「良い」の獲得数はゼロであった。14

posted at 21:44:00

2月28日

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だがあきらめてはならない。十枚のスリケンを投げて効かぬなら、千枚、一万枚のスリケンを投げるべし。……ピボッ。UNIXの電源を切ろうとした彼女はアラートに気づいた。IRC-SNSにメッセージが届いている! 15

posted at 21:47:00

2月28日

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はやる気持ちを抑え、彼女は開封ボタンを押した。

【一攫千金の秘訣! 寝ているだけで無限に儲かる! あなただけにお伝えする秘密! 今ならセミナー参加者枠に空きがあります! あと一名!】

ユカノはメッセージを削除し、電源を落とした。 16

posted at 21:50:00

2月28日

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岡山県のオンセン宿場町「シズカガオカ」。遠景に霞むドラゴン・マウンテンを見る小都市は国家消滅後の今も、変わらぬ営みを続けている。人々は市場を行き来し、観光客はこの地であちこちから湧き出すオンセンを楽しみ、よりハードコアな湯治客はさらにその先の最果ての宿「マサシの悟り」を目指す。18

posted at 21:53:00

2月28日

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標高の高い地ならではの清冽なカルチャーは、ネオサイタマとまるで違う。観光地としての賑わいもある。観光客向けのオンセングルメ屋台と地元民向けの市場屋台が混在する町の中心地の名は「サカンナ広場」……最近この場所に、謎めいた女性が現れるようになった。 19

posted at 21:56:00

2月28日

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彼女は週に何度か、決まった時刻に単独で黙々とカラテのカタを行う。質素な身なりではあったが、美貌は際立ち、バストは豊満であった。カラテ美女はまっすぐな木の前に立ち、幹に向かって淡々と、フック、チョップ、掌打を打ち、虚空に連続回し蹴りを放ち、最後にストレッチと瞑想を行うのだ。 20

posted at 21:59:00

2月28日

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通行人や観光客の目に留まると、彼女はそばに置いた荷物からチラシを取り出し、差し出した。チラシには「ドラゴン・ドージョー。カラテ修練、修行。ドラゴン・ユカノ」と書かれており、更に、峻厳な山の山頂付近にドージョーがある事を伝える地図が添えられていた。 21

posted at 22:02:00

2月28日

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彼女のカラテ・ワークの隣にはオンセン・モチの屋台があり、白い湯気と良い匂いで、常に繁盛していた。「ミート・モチ二個ね。アイヨ!」「はい、お客さんは? ミソね。アイヨ!」「次の方!野菜?ちょっと待ってね。今できるから」 22

posted at 22:05:00

2月28日

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膝の悪い店主が愛想よく客に応対する横で、ユカノは黙々とカラテを続けた。通行人は横目で彼女を見ては、そのまま通り過ぎる。チラシを受け取る者はほとんど居ないし、受け取っても、それきりだ。オンセン・モチの客も行列待ちの間ユカノに目を向けるが、モチを受け取ればそのまま去って行った。 23

posted at 22:08:00

2月28日

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ユカノはベンチに座り、溜息をつく。既に二ヶ月。この境遇が日常だ。「ドーゾ」俯く彼女にモチが差し出された。困惑気味に顔を上げると……「フジキド!?」「そこで買った。……隙だらけだな」旅姿の男は低く言った。ユカノは自嘲気味に笑い、モチの袋を受け取った。「今のアンブッシュは百点です」24

posted at 22:11:00

2月28日

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フジキドは傍らに置かれた紙束から一枚取った。ユカノは少し慌てた。「あ、それは」「……門下生募集」彼は靄に霞む峻厳な山を見やった。ここから一時間でマサシの悟り。そしてさらに遠い道のりをかけて、ドラゴン・ドージョー……。「え、ええ、そうです」ユカノは所在なさげにした。 25

posted at 22:14:00

2月28日

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「フジキドはこの地に何をしに?温泉療養ですか?」「IRC-SNSで、ドラゴン・ドージョーの紹介を見た。あれはユカノが作ったのか?」「はい。恥ずかしながら」ユカノは頷いた。「門下生はまだ……居ませんが」「成る程」フジキドは驚かなかった。ユカノはやり場のない思いにとらわれた。 26

posted at 22:17:00

2月28日

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「笑ってください。そんなふうにされると、かえってみじめです。わかっています。閑古鳥です、ブザマです……」「確認するが。この町で勧誘を行い、あの山頂付近まで連れて行き、住みこませるつもりか」「ええ、勿論」「ラマに乗り、山をずっと上がって、崖を上がるわけか」「その……それが何か?」27

posted at 22:20:00

2月28日

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「話は長くなりそうだ」フジキドはユカノの隣に腰を下ろした。「私は時折ドラゴン・ドージョーIRCルームを確認していた。ゆえに運営が芳しくない事も既にわかっている。そのうえで言うが……これでは今後も門下生は集まるまい」「何故ですか?そもそも、何故 "良い" を押してくれなかったのですか」 28

posted at 22:23:00

2月28日

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「その話はいい。いいか、ユカノ。門下生はニンジャではない。少なくとも入門時は一般市民だ」「それはそうです」「入門以前に、あの山道で音を上げる」「整備を行いました。昔と違って遥かに容易のはず。中国地方にあったドージョーに比べればいくぶん不便かもしれませんが、それでも……」 29

posted at 22:26:00

2月28日

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「当時のドージョーはまだネオサイタマに近かった。だが、ここは違う。岡山県の山中だ。ただでさえ人口が少ない土地で、更に人里離れた場所にドージョーを構えて、ただ待っていても、誰も来はせんぞ」「でも、ドラゴン・マウンテンは、ドラゴン・ドージョー始まりの地なのです」ユカノは主張した。 30

posted at 22:29:00

2月28日

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「私にとって重大な場所で……守るべき墳墓もあります」「それはそうだろう。だがドージョー運営は神秘的なニンジャクエストとは別ベクトルで……現実的な視点が必要だ。どんな人間を門下生にするか、想定しているか?」「ジュー・ジツを学び、チャドーを学び、ドラゴンロードの入り口に立つ者です」31

posted at 22:32:00

2月28日

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ユカノは力強く言った。「常に自己を研鑽し、怠けず、力に溺れぬ高潔な意志と……」「学ぶ者だ。まずは学ぶ者を集めねば。ユカノ」フジキドは遮った。「今は平安時代ではない。全員がまさにリアルニンジャとして奥義伝授の資格を得る者になれずとも、学ぶこと、それ自体に意義はある筈だ」 32

posted at 22:35:00

2月28日

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「ドラゴンロードを征く高潔な意志の持ち主はいつか必ず現れます!」「それまでただ待つのか。それではドージョーは成り立つまい。隠者になりたいのか?であればよいが、オヌシの本心は違う筈だ。IRC-SNSなども使って……」「そ、それはそうですが!でも!」「聞くのだ、ユカノ」フジキドは言った。 33

posted at 22:38:00

2月28日

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「ゲンドーソー=センセイの教え……更に遡れば太古の昔にオヌシが創始したクランの教えは、ニンジャのみならず、カラテを扱う者の規範たりうると私は思う。実際に山頂に至り、本格的なニュービーニンジャとなる者は稀だ。それでよいのだ。まず間口を広く取り、現代的なドージョーの在り方を……」 34

posted at 22:41:00

2月28日

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「ゲンドーソーは……ローシ・ニンジャ=サンは、沢山のニュービー・ニンジャを鍛えておりました!」ユカノの目に涙が浮かんだ。「あの日のドージョー襲撃が無ければ……彼らは……!」悲痛な言葉であった。ソウカイ・シンジケートの襲撃により、ドージョーのニュービーは全て死に絶えたのである。 35

posted at 22:44:00

2月28日

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その襲撃者たるアースクエイクもヒュージシュリケンも、既に生きておらぬ。フジキドが殺したのだ。ショッギョ・ムッジョである。「……ユカノ」フジキドは震えるユカノの肩に手を置いた。ユカノは泣いた。溜め込んできた様々な感情が、堰を切ったように彼女に押し寄せていたのだ。 36

posted at 22:47:00

2月28日

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店じまいをした屋台のおやじが、やや離れた場所で彼らの修羅場を固唾をのんで見守っていた。やがてフジキドは言った。「しばらく滞在する。ゲンドーソー=センセイという同じ師を戴いた者として、微力ながら力を貸そう。ユカノ」「……」ユカノは目を伏せ、涙をぬぐった。彼女は無言でうなずいた。 37

posted at 22:50:00

2月28日

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「スウーッ……」「ハアーッ……」ユカノとフジキドは互いに向かい合って地面に正座し、朝の空気を深く吸い込んだ。非常にゆっくりとした動作で立ち上がった二人は、ワン・インチ距離で向かい合い、ゆっくりと互いに拳を動かした。ミニマル木人拳めいたショートフックの応酬である。 39

posted at 22:56:00

2月28日

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フック……短打……掌底……チョップ……フック。やがてフジキドが手を止めた。「ユカノ」彼は目で示した。広場の反対側に、頭にテヌギーを巻き、サイバーサングラスをかけた、バックパッカー風の若い男が座っていた。男は小さな太鼓を二つ並べ、チューニングをしていた。見たところタブラの一種だ。40

posted at 22:59:00

2月28日

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トンツクトンツクトンツクトントン。男は道行く者達に欠けた歯で笑顔を見せ、タブラの演奏を始めた。2人はタブラ奏者の付近に移動した。トンツクトンツクトンツクトントン。フジキドは太鼓の音に耳を傾け、拳をゆっくりとユカノに繰り出した。意を得たユカノは、太鼓のリズムに乗せて、拳を返した。41

posted at 23:02:00

2月28日

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トンツクトンツクトンツクトンツク。トンツクトンツクトンツクトンツク。フック…短打…掌底…チョップ…フック。音に合わせてステップを踏み、肩を上下に揺らした。フジキドがユカノに手招きした。「イヤーッ!」ユカノが回し蹴りを繰り出した。フジキドは身を屈めて躱し、回し蹴りを打ち返した。 42

posted at 23:05:00

2月28日

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「イヤーッ!」ユカノは同様に身を屈めて躱しながら、後ろ脚で回し蹴りを放つ。メイアルーアジコンパッソだ。トンツクトンツクトンツクトンツク。音に合わせ、彼らは交互に回し蹴りを繰り出した。五回。十回。十五回。「オーッ!」モチ屋台に並ぶ人々の歓声と拍手が湧いた。タブラ奏者にも熱が入る。43

posted at 23:08:00

2月28日

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「「イヤーッ!」」2人は同時にフリップジャンプした。見えない円周をなぞって身体を運び、蹴りとチョップを打ち合い、新たなカラテムーヴに繋げる。ダカダダン!ダカダダン!力強いビート・ブレイクに乗せ、彼らはコンビネーション・ブローを打ち合い、バック転を繰り出し、同時にザンシンした! 44

posted at 23:11:00

2月28日

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その日以降、彼らの陣取りは、タブラ奏者の演奏の横になった。二人はサカンナ広場の一角で連日カラテを行った。細かな近接カラテのなかに差し挟まれる大掛かりなムーヴ。その静と動のダイナミズムが、素養の無い者にも真新しいものとして受け止められていた。 47

posted at 23:20:00

2月28日

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「やはり組手は良いものですね!」ユカノは正座して息を整えながら、表情を輝かせた。「相手が居る事で、出来る事の幅が広がりました」「うむ」フジキドは頷いた。「だが、まだ何も成し遂げておらぬ」彼は急ごしらえのチラシを持参してきた。 48

posted at 23:23:00

2月28日

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チラシには、「ドラゴン・ドージョー出張。サカンナ広場にて週3度。健康になり、精神が強くなる。気軽に参加できます」と書かれている。山の上のドージョー本陣は用いず、教えの場を広場に移し、厳しい修行についてもトーンを弱めた書き方である。ユカノはやや抵抗を感じたが、背に腹は代えられぬ。49

posted at 23:26:00

2月28日

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer@NJSLYR

まずは門下生を。ニンジャにならずとも、教えの一端に触れてもらえれば、それは前進だ。「調子はどうだね」モチのおやじが差し入れを持ってきた。皆で談笑しながら食べた。タブラ奏者はネイサンといい、察しの通りバックパッカー旅行者で、出身はカナダ。磁気嵐の消滅によって海を越えてきたという。50

posted at 23:29:00

2月28日

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer@NJSLYR

「やはり岡山県は神秘的な場所ですね。あなた方のようなカラテに出会えた」ネイサンは感心した。ユカノは答えた。「私達も昔からここに居たわけではなくて、ネオサイタマから……いえ、昔の私には……ええと……複雑な話なのです」苦笑し、「とにかく、かつてありし教えを蘇らせることができればと」51

posted at 23:32:00

2月28日

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer@NJSLYR

「素敵ですね。とてもミスティックな……おや?」ネイサンは近づいて来る者に気づいた。大股でズカズカと向かってくる、背の高い若者だった。「ドケヨ!」「アイエエッ!」広場の市民を荒っぽく押し退けながら、若者はユカノたちのもとに至った。「ヨォ、アンタら最近、目立ってンじゃねえか!」 52

posted at 23:35:00

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